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向井悟准教授「脂肪細胞受容体シグナル」が脂肪分解を促すことを発見

東亜大学医療学部健康栄養学科の向井悟准教授(元九州大学大学院歯学研究院附属OBT研究センター)、九州大学大学院歯学研究院附属OBT研究センターの溝上顕子准教授、福岡歯科大学口腔医学研究センター長の平田雅人客員教授らの研究グループは、脂肪細胞におけるGPRC6Aシグナル不全が脂肪の分解を抑制し、食餌誘発性の肥満とそれに起因する代謝異常を引き起こすことを明らかにしました。

GPRC6A(Gタンパク質共役型受容体)は、骨ホルモンであるオステオカルシン、オルニチンといったアミノ酸、テストステロン、細胞外Ca2+などの多様な分子に応答します。GPRC6Aを持たないマウスは、メタボリックシンドロームが進行したり、骨量が減少したりと様々な異常を示すことが既に報告されていましたが、その詳細な役割は不明でした。

研究グループはこれまでに、脂肪細胞のGPRC6Aがオステオカルシンにより活性化し、脂肪細胞を縮小させることを明らかにしています。そこで、脂肪細胞におけるGPRC6Aシグナルが重要ではないかと考え、脂肪特異的にGPRC6Aを持たないマウス(adG6AKO)を作成し、GPRC6Aを介したシグナル経路が脂肪蓄積を制御するメカニズムを解析しました。

すると、adG6AKOマウスを高栄養食で飼育すると、GPRC6Aを持つマウスと摂食量はほぼ同じであるにも関わらず、体重増加が著しいことがわかりました。また、adG6AKOマウスの脂肪細胞は著しく肥大しており、肝臓への脂肪蓄積も顕著でした。

さらに、脂肪細胞における脂肪酸取り込み、中性脂肪合成、脂肪分解の各ステップに関わる分子群の発現を比較したところ、adG6AKOマウスの脂肪組織では脂肪を分解する酵素群が著しく減少しており、脂肪分解が抑制されていることがわかりました。その結果adG6AKOマウスでは肥満、高血糖、耐糖能異常などのメタボリックシンドローム様を呈することがわかったんです。

GPRC6Aは多様な分子に応答しますが、本研究では脂肪分解酵素の発現を上昇させるにはオステオカルシンとオルニチンが最も有効であったことから、脂肪細胞をオステオカルシンやオルニチンで刺激したところ、脂肪分解酵素群の発現は増加しました。

つまり、adG6AKOマウスの肥満は、オステオカルシンやオルニチンによる恒常的なGPRC6Aシグナルがなくなったことによって脂肪分解酵素が減少し、脂肪分解が抑制されたことに起因することを示します。脂肪細胞におけるGPRC6Aシグナルの恒常的な活性化が脂肪の分解を促進し、全身の代謝調節に重要な役割を果たしていることが明らかになりました。

本研究成果は、2021年1月9日(米国時間)に米国科学雑誌「Journal of Biological Chemistry」で公開されました。



研究者コメント:脂肪組織におけるオステオカルシンやオルニチンによる恒常的なGPRC6Aシグナルが肥満を抑制することが今回明らかになりました。この成果が肥満治療法開発につながればと思います。